人間って肉食?草食? 人類の食性について考える

哺乳類
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今回は、ホモ・サピエンスという聞き慣れない動物についての話をしたいと思います。
一般的にあまり知られていないもしれませんが、このホモ・サピエンスという動物は、休日の上野動物園に行けばいくらでも見ることができます。
上野公園では、家族単位や若いカップルなどの様々な集団や、稀に単独行動をしている個体など、様々なホモ・サピエンスが檻の外で活動をしている様子を見学すること可能となっているようです。

と、冗談はここまでにして、今回は人間(ホモ・サピエンス)の食性について考えたいと思います。

動物(真正後生動物)の食性には大きく分けて、

トラやライオンに代表される『肉食
ウマやウシに代表される『草食
クマなどに代表される『雑食

に分けることができます。
また、雑食には肉食性が強いオオカミや、草食性の強いイノシシなどと幅があることもわかっています。
※食性には細かく分ければ昆虫食や果実食などあるが、今回はそこまで細かい話は考慮しない。

現在の人類には、肉を食べないベジタリアンや、肉はもちろん乳製品や玉子などといった動物由来の食品も完全に排除するヴィーガンと呼ばれる人たちも一定数存在することが知られていますが、一方で肉しか食べずに生活する人はほとんどおらず、そういった人たちに対する名前もないのが現状です。
※肉しか食べない人は、carnivore(主に獣に対して使われる肉食)やmeat-eater(単純に肉を食べる人という意味)などと無理やり名前をつけているそうですが、いずれも市民権を得ている呼び方ではありません。

以上のことから考えて、人間が肉食動物でないことは確実です。

おそらく人間は、草食性の強い雑食動物と言えるでしょう。

進化の歴史において、人間の食性が肉食にかなり偏った時期もあるでしょうが、果物などがあれば普通に食べたでしょうし、完全な肉食になったことはないと考えられます。
では、なぜ現生人類であるホモ・サピエンスが草食性の強い雑食であると言い切れるのか、以下で根拠を示していきたいと思います。
※当記事で示す草食とは、植物食全般を意味する広義の草食であり、草しか食べない狭義の草食ではありません。

サル類(サル目)の食性

人間は当然サル目に分類される動物なのですが、このサル目の動物はメガネザルを除き草食から草食性の強い雑食の動物であり、肉食からはかなり離れた動物であることが判明しています。
人間ともっとも近いチンパンジーはサル類の中では雑食性が強い傾向にありますが、それでも食事の食事の90%以上は植物を食べており、1頭あたりが1日に摂取する肉(昆虫などを除く)の量は平均20g程度と言われています。
※ちなみに、カニクイザルも主食は果物など植物である

以上のことから考えて、いくら雑食性の強いチンパンジーと共通祖先をもつ人類であっても、サル目の中で肉食あるいは肉食性の強い雑食にまで進化していないものと思われるわけです。

そもそも哺乳類を常食する哺乳類は、シャチ(と人間)を除き基本的に全てネコ目になるので、サル目の人間が肉食動物へと進化するには相当の時間とよほどの環境がなければありないと言えるでしょう。

歯の形状

肉食の動物は、犬歯に代表される鋭く尖った歯(鳥の場合は大きなクチバシ)が大抵ありますが、人類には肉食動物のような鋭く尖った歯はなく、むしろ臼歯という穀物のような硬い食べ物をすりつぶす歯が発達しています。
これは、肉食動物の特徴というよりは植物動物における歯の特徴です。

人類は知恵を身につけているため、通常の肉食動物と獲物を捕獲方法や肉の食べ方に相違があることも原因なのでしょうが(獲物を捕らえるときに武器を使うことや、肉を調理することなど)、しかしその点を考えても人間の歯には肉食動物としての特徴がなさすぎます。

胃の長さ

各動物における“体長当たりの腸の長さ”は、消化スピードの関係で肉食動物より草食動物のほうが長くなります。
以下、代表的な動物の腸の長さです。

ネコ(純肉食動物)は、体長比3倍~4倍
イヌ(肉食性の強い雑食動物)は、体長比5倍~6倍
ブタ(草食性の強い雑食動物)は、体長比14倍~15倍
ウマ(草食動物)は、体長比12倍程度

人類の腸の長さは体長の10倍~12倍程であり、肉食動物よりは草食動物に近い長さとなっています。

※人類の腸の長さを体長の5倍などと記載されている資料もありますが、これは人類が二足歩行をしている関係で体長の測り方が他の動物と違うためです。

現在の人類の食性

現在の人類は、ほとんどの食事を植物由来の食材で賄っています。
例えば(日本式の)カレーライスは、ごはん(米)、ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎなどの植物由来の食べ物に、ほんの少し動物由来の食べ物(肉類)が入るだけです。
カツカレーですら、大半は植物由来の食べ物が占めています。
ラーメンにしてもチャーシュー以外の肉類が入ることは多くなく、(チャーシュー以外では)スープの出汁に動物性食品が使われる程度となっています。
現在の日本で食事をする場合、重さベース(食べる量ベース)で肉の比率が50%を超えることなどほとんどないに等しいでしょう。

ごく一部の地域を除き、地球上のほとんどで人類は上記したような大半が植物由来の食事をしているのが現状です。

人間の子供が好む食べ物

人間は他の哺乳類に比べ成長と共に味覚を変えていきやすい動物で、大人の人間は食事の好みに大きな差が出やすくなっています。
そのため、人間が本質的に望んでいる食性がわかりづらいのですが、人間の子供に関しては共通した嗜好性があります。

それは甘いものが好きということです。

人間の子供が甘いものを好むのは、地域や民族性に関係なく、地球上のほとんどで共通しています。
つまり、人間は本質的には甘い食べ物、具体的には果実を食材としてもっとも望んでいると思われるわけです。
少なくとも、甘味の少ない肉を最優先に望んでいるという事実はないでしょう。
果実は、人間に近いヒト科動物がもっとも好んで食べる食材であり、この点から考えても人間が本質的に望む食材の1位は果実なのだと思われます。

草食転換への異常な速さ

人類とチンパンジーの共通祖先は、森林で果物などを中心とした食生活を送っていました。(現在のチンパンジーと同じと思って差し支えがない)
それが寒冷化などの影響から、人類の祖先は森林を捨て草原へ出ていくわけですが、当然、草原は森林に比べ果実などの栄養価の高い食べ物がありません。
その結果、人類は足りなくなった栄養素を動物の肉に求め肉食への依存度を高めていき、時期や地域によっては100%近くの食事を動物の肉で賄うようにまでなりました。
このような状態は、最終氷河が終わり人類が農耕を始める2万年から1万年前まで数百万年続いたものと思われます。

それが農耕を始めた1~2万年程度で、一気に草食(穀物食)側へと移行したということです。(動物の進化において1~2万年は一瞬の出来事である)
これは、人間がそもそも草食性の強い動物であり、植物由来の食べ物を求めていた結果から起こった現象と言えるでしょう。
もし人間が肉食性の強い動物へとしっかりと進化していたら、こんなには短い期間で草食側に偏ることはないはずです。
やはり、サル目の動物である人間が肉食に極端に依存していたということは、かなりの無理があったのだと思われます。

まとめ

以上の6点から人間(ホモ・サピエンス)は、草食性の強い雑食動物であると考えられるわけです。
人類は進化の歴史の中で、環境の変化などにより果実などといった栄養価の高い食事にありつけない状況に陥り、肉を多く食べるようになった時期もあるようですが、農耕という技術を覚え本来あるべき草食性の強い雑食へと戻ったものと思われます。
結局、人類の肉食思考が強くなったのは、進化の歴史において緊急避難的でしかなかったのでしょう。
もし、人間が本当に肉食動物、または肉食性の強い雑食動物へ進化するのなら、その時間は100万年単位でも足りず1000万年単位の時間が必要になるはずです。

近年、インターネットなどでヴィーガンの人が言う食事と全く関係のない意見に対して、肉を食わないからおかしいことを言うなどという批判の声が挙がることがあります。
これはグリンピースやシーシェパードに代表される動物保護の活動団体への批判なども影響していると思われ、ヴィーガン推進派側にも問題はあるのでしょうが、だからといってヴィーガンの人に肉を食えと言って批判を行うのは暴論と指摘せざるを得ません。

私はヴィーガンでもベジタリアンでもないですが(肉より野菜のほうが好きだが)、人類は根本的に草食性の強い雑食動物であり、肉食側への進化より草食側への進化のほうが起こりやすい動物なのですから、ヴィーガンやベジタリアンへの根拠のない批判は避けるべきかと思います。

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コメント

  1. 肉好き より:

    メガネザルがサル目の中で肉食に進化したんだったら、人間だって肉食に進化することは可能なんじゃないですか?

    • 動物のランキング集『日々、動物ブログ』管理人 より:

      サル目は、キツネザルやロリスなどの曲鼻猿亜目と、人類やニホンザルなどの直鼻猿亜目に大別されます。
      メガネザルは、この直鼻猿亜目の中で他のグループと6000万年ほど前に枝分かれし、1科1属として独自な進化をしてきました。
      人間とチンパンジーが枝分かれしたのは450万年前から500万年前と言われていますが、この程度の期間では草食性の強い雑食から完全な肉食へと進化するには時間が足りないのでしょう。

      本文にもありますが、哺乳類が草食から肉食への進化には、最低でも1000万年単位の時間が必要になるものと思われます。